不登校・ひきこもり

・不登校とひきこもりは、連続する可能性があるため、早期の介入が必要となります。

・不登校・ひきこもりには、多様な要因が関連しているため、介入の際には、多面的なアセスメントが必要です。

・不登校・ひきこもりの支援では、本人の支援だけでなく、家族の健康度を高めることも重要になります。

不登校・ひきこもりの定義と疫学

「不登校」・「ひきこもり」は、臨床単位や診断名ではなく、状態像を指す用語です。不登校は、その定義上、義務教育である小・中学生に該当するが、同様の状態は、高校生や大学生、大学院生にもみられることがあります。また、心理的・社会的な葛藤から登校ができなくなり、この状態が長期化することで、ひきこもり状態に移行する可能性も高いため、「不登校」と「ひきこもり」は連続する可能性があり、両者には、密接な関連があります。

 文部科学省の報告によれば、平成27年度の不登校を理由に長期欠席している者は、小学生で27,581名 (全生徒数に占める割合は、0.42%)、中学生で98,428名 (同2.83%) であり、いずれの校種でも前年度よりも増加しています。また、不登校者数の推移の特徴として、学年が上がることに、その数の増加が報告されています。一方、内閣府のひきもりに関する調査によれば、全国の15~39歳のうち、ひきこもっている人は、563,000人とされています (内閣府, 2016)。

不登校・ひきこもりの要因

不登校・ひきこもりには、生物学的要因、心理学的要因、社会的要因などの多面的な要因が関連しています。本人の性格、疾患、学力、運動能力、思春期特有の自己意識や劣等感、コミュニケーションスキルなどの個人要因や、いじめなどの交友関係の要因、あるいは、虐待、親の精神疾患などの家庭の要因など、さまざまな要因が関連しています。

臨床上の特徴と支援:不登校

 不登校支援の目標は、不登校の生活を送りながらも新たな自己を確立することにあります。性急な学校復帰を促したり、子どもの気持ちを一般論に当てはめて決めつけることなく、子どもが抱えているそのままの形で理解することを大切にしながら、広い視野をもって支援することが必要になります。個々の事例に則したテーラーメイドの支援を行うためには、子どもの要因 (会話能力、学力、運動能力、仲間関係、性格、背景疾患など) や子どもを取り巻く環境の要因 (家族機能の質、教員等との関係、在籍している学校の特徴など) の複合的な視点を踏まえた的確なアセスメントが重要です。

このアセスメントの上で、家族との関係が切れないように留意しながら家族面談を行い、支援策を検討します。この際、学校内で支援チームを結成し、1人の教員が事例を抱えてつぶれしまわないように留意することが大切です。また必要に応じては、学校以外の関係機関などとも連携をとりながら、チームとして支援を検討していくことも重要です。子どもの不登校の状況の中で、家族等が疲弊したり苦悩の状況にあることも多く、保護者とも連携をとりながら、適切なタイミングで、適切な支援機関や自助グループ等につなげるなど、家族の精神的健康度を高めるための働きかけも重要です。 

臨床上の特徴と支援:ひきこもり

 ひきこもりの支援は困難を伴うものではありますが、正確な情報を収集し、養育者が適切に対応できるように支えることにより、その解決は可能となります。

 ひきこもりの治療的な支援には、①家族相談、②個人治療、③集団適応支援の3段階があるといわれています。

 「家族相談」の段階では、長期にわたって子どもとの断絶や葛藤に悩んできた家族の相談に応じつつ、「ひきこもり」の知識と対応法について情報提供を行います。ひきこもりの事例では、本人が治療を拒むことも多いことから、初期段階の支援は家族支援を中心に行うことになります。この段階の目標は、「本人が安心してひきこもっていられる関係を保障する」ことが中心であり、このような支援を継続することで、本人と家族との断絶が修復され、相互の会話が復活するようになります。そして、家族の粘り強い誘いによって本人が受診することが可能になります。

 本人が通院することができるような状況となった場合は、「個人治療」の段階に移行します。この段階では、支援者と本人のコミュニケーションを重ねて信頼関係を構築していきます。その中で、本人に対する個人療法と、場合によっては薬物療法を開始します。

 最終的な「集団適応」の段階では、本人と同様の問題を抱えた若者たちのたまり場的な場所やデイケア、自助グループなどを紹介し、親密な仲間関係を経験していきます。その後、アルバイト、就労と段階的に社会参加をステップアップしていきます。

 なお、本人への支援に移行して以降の養育者の支援では、本人に対する支援の間も継続し、ひきこもりとその対応についての理解を深めてもらうように努めることが必要です。

参考文献

文部科学省 (2016). 平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/10/__icsFiles/afieldfile/2016/10/27/1378692_001.pdf

内閣府 (2016). 若者の生活に関する調査報告書 http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html

厚生労働省 (2010). ひこもりの評価・支援に関するガイドライン http://www.zmhwc.jp/pdf/report/guidebook.pdf

齋藤万比古 (2016). 増補 不登校の児童・思春期精神医学 金剛出版

齋藤環 (2013). 不登校とひきこもり―対応の実際― 思春期学 31(1), 147-151.

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