パートナーが家族に暴力をふるう~どんな影響があるの~

・子どもの成長には、安心感が重要です。

・パートナーからの暴力 (DV) は、子どもの成長に悪影響を与えます。

・DVを目撃した子どもの心の中では、さまざまな感情がうず巻き、心や身体に症状が現れることもあります

・DVは、子どもの心に深刻な影響を及ぼし、成長した後で、悪影響がはっきりしてくることもあります。

・DVは、子そだてにも悪影響を及ぼすことがあります。

子どもの成長には、安心感が重要です

子どもの成長には、信頼できる大人との絆(きずな)や、安全で守られているという安心感が大切です。とくに、子どもは親を安心感を与えてくれる安全基地としながら、この安心感をエネルギーに変えていろいろなことに興味を持ち、行動する範囲を広げていきます。子どもは、このような活動の中でさまざまな力を伸ばすとともに、周囲の人と安定した人間関係を作っていくのです。

パートナーからの暴力 (DV) は、子どもの成長に悪影響を与えます

しかし、安心を与えてくれるはずの親がパートナーから暴力を受けていると、子どもはとても不安定になり、心や身体に悪影響がでます。とくに幼い時期については、子ども自身が暴力を受けるよりも、親が暴力を受けている様子をみることの方が、子どもにとって心理的なダメージが大きいという研究報告もあります。
 たしかに「子どもに暴力場面を見せなければよい」と思っている人もいます。しかし、子どもにとっての安全基地である親や家庭に危険があれば、子どもはそれを敏感に感じとるものです。「『ころんだ』と言うけど、あの怪我は変だ」
「『何でもない』というけど、いつもと違う表情だ」
「なぜかママが無口だし、いつものように笑わないな・・・」
子どもなりにその原因を突き止めようと、耳をすませ、状況をよくみて、両親の間で何が起きているかをさぐり当ててしまいます。ある研究報告によれば、親が暴力を見せない努力をしたとしても、85〜90%の子どもにDVの影響があります。

DVを目撃した子どもの心の中では、さまざまな感情がうず巻き、心や身体に症状が現れることもあります

親がパートナーから暴力を受けていることを見たり、知ったりする場合、端からみて問題ないように見えても、子どもなりに対処しようとしている場合があります。子どもがパートナーから暴力を受けている場面を見て、自身が深く傷つかないため、パートナーが親に暴力を振るっている事実を認めるのが恐いため、パートナーからの暴力の被害を受けている親を不安にさせないため、パートナーの暴力をエスカレートさせないため・・・など理由はさまざまですが、暴力に気づかないふりをしたり、しかたないことであると考えたりしています。

子どもによっては、暴力の場面を見ていても何も感じていないようふるまう子どもさえいますが、このような子どもの反応から、子どもには影響がないと思い込んでいる大人がいます。このようなことを言われた人もいるのではないでしょうか?
「うちの子は知らないはずです」
「平気でゲームをしていました」
「パートナーは、わたしには暴力を振るいますが、子どもには優しいから、子どもは何も感じてないと思います」

など・・・。

しかし、子どもの心の中では、さまざまな感情がうず巻き、不安や恐怖感とともに、ネガティブな考えをもつようになります。暴力の原因は自分だと思いこんで自分を責めたり、自己嫌悪感を抱いたりします。このようなネガティブな感情は自信を失うことにもつながり、子どもが明るい将来をえがけなくなります。

さらに、暴力をふるっている親を憎むだけでなく、そういった暴力から守ってくれない周囲の大人や世の中に対して、強い不信感や怒りを持つこともあります。子どもが自分を守ってもらえないと思うことについては、被害を受けている親に対して腹をたてることさえあります。暴力の被害者である親に対して怒りを感じるという矛盾(むじゅん)した思いが生じる中で、気持ちが安定せずに心や身体に症状が現れることもあります。

DVは、子どもの心に深刻な影響を及ぼし、成長した後で、悪影響がはっきりしてくることもあります

DVは、子どもの健康にも深刻な影響をおよぼします。抑うつやPTSD、不安症状のほか、不眠、摂食障害、腹痛、頭痛、低体重や肥満、ぜんそくやアレルギーが治りにくくなる・・・など、さまざまな影響があるのです。10代になって危険な行動や若年の飲酒・薬物依存などの問題が生じるなど、成長した後に悪影響がはっきりしてくることも知られています。

DVは、子そだてにも悪影響を及ぼすことがあります

DVの被害を受けている親は、抑うつやPTSDなどの症状などの影響で自分のことで精一杯になってしまい、子どもに十分な目を配ることができないこともあります。自分の気持ちに余裕がなくなってイライラしたり、子どもに必要以上に厳しいしつけをしてしまうこともあるかもしれません。DVの影響で子どもが落ち着かなかったり、乱暴だったりしたとしたら、子どもの気持ちを尊重できない子育てになってしまうかもしれません。

一方で、ある研究からは、養育者、特に母親、の暖かみある子そだてによって、子どもに対するDVの悪影響が低減することも報告されています。

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