貧困

・貧困には、絶対的貧困、相対的貧困、剥奪、社会的排除などがあります。

・相対的貧困率は、等価所得が全体の中央値の50%以下の世帯の割合を用いています。

・貧困や不況は、児童虐待のリスクともなります。

貧困とは

貧困とは、どのような状況を示すのでしょうか?

いわゆる衣食住にも困るような状態は、「絶対的貧困」と呼ばれますが、厚生労働省が子どもの貧困の指標として用いているのは「相対的貧困率」です。相対的貧困率とは、中央値の50%以下の等価可処分所得の世帯(税金や社会保険料を支払い、年金や生活保護、児童手当などの給付金を加えた後の所得)の割合を指します。つまり、全世帯の等価可処分所得を一番低い値から高い値まで並べた時に、下から1/4に当てはまる割合が、子どものいる世帯では16.3% (2012年) であったことを示します。特に、ひとり親家庭では相対的貧困率は54.6%となることが報告されており、ひとり親家庭への支援が求められています。

 他にも、所得だけではなく生活水準から貧困を表す指標として用いられているのが、「剥奪(deprivation, material hardship)」という概念です。この概念は、絵本がある、携帯電話や冷暖房を持っている、必要な時に医療機関を受診できる、といった社会的に生活必需品とされているものが足りていない状態を指します。また、上記のような状態から社会参加や人間関係などから切り離されてしまう状態を「社会的排除(social exclusion)」と呼びます。

貧困が子どもに与える影響

 貧困は、経済的困窮、失業、一人親家庭などはストレスやうつ症状の増加などと関連があり、児童虐待のリスク因子として知られていますが、収入だけではなく物質的な必需品が足りていない剥奪の状態でも児童虐待との関連が報告されています。さらに、不況時には身体的虐待、虐待による乳幼児頭部外傷の増加が報告されており、普段の貧困経済状態・生活水準のアセスメントに加えて、社会経済の悪化などの急な変化にも着目して、児童虐待のアセスメントを行う必要があります。

阿部彩 貧困統計ホームページ.  http://www.hinkonstat.net/

Yang MY. (2015) The effect of material hardship on child protective service involvement. Child Abuse Negl. 41:113-25.

Berger RP et al. (2011) Abusive head trauma during a time of increased unemployment: a multicenter analysis. Pediatrics. 128(4):637-43.

参考文献

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