プロジェクトの概要
【研究1】
本研究では、児童虐待事例のデータベースを多角的に解析し、児童虐待の発生・重症化を引き起こす要因や児童虐待の予防につながる要因を明らかにします。そして、これらの指標を基に、児童虐待事例の初期対応時に児童虐待のリスクを判断するための評価システムを開発し、この評価システムに基づいた各事例のリスク評価および対応のためのガイドラインを作成します。 これにより、児童相談所や各自治体における児童虐待事例の初期対応の時点で、エビデンスに基づいた、確度と信頼性の高いケースのリスク判定と経過予測が可能になり、これまで以上に効果的な対応ができることが期待されます。
【研究2】
児童虐待の予防では、養育者の養育困難から生じてしまう虐待や、意図せずとも行われてしまった不適切な養育が高じて生じてしまう虐待の予防的な対応が必要になります。研究2では、乳幼児健診受診者を対象に子どもの育てにくさやこれに関連する要因の調査を行い、このデータをもとに不適切な養育を行ってしまう養育者の実態把握と早期発見のためのガイドラインを作成します。
【研究3】
本研究では、研究1および研究2で得られた知見を踏まえ、子どもの虐待の予防、早期発見および再発防止を目指したアプリケーションソフト (以下、アプリ; 子ども虐待リスク評価&対応アプリ (仮称)) の開発を行います。具体的には、子どもの虐待リスクを評価するアプリ (子ども虐待リスク評価システム(仮称)) と子どもの虐待に関連する情報提供アプリ (項目から引く子ども虐待対応アプリ (仮称)) の2つのアプリを開発します。
この2つのアプリは、支援者が育児不安や子育て困難を抱える養育者に対して的確な判断や支援をできるようにサポートするために開発されたアプリであり、このアプリを活用することで支援者が家庭訪問を行う際や関係機関 (児童相談所、市区町村、学校、福祉事務所、児童福祉施設等) 間での支援検討会議を行う際などに、エビデンスに基づく虐待のリスク評価や対応のための情報を得られることができます。つまり、虐待が疑われる状況につながるリスクや、その抑制に寄与するストレングスの評価をエビデンスに基づいて判断することにより、適切な支援が実施され、児童虐待の早期予防や重症化の抑止、再発事例の減少につながることが期待されます。